東工大原子炉研
@山形和弘, 野村新一, 渡辺成章, 安食泰秀, 小泉悦子, 嶋田隆一
近年、Bi系高温超電導線の高磁界化、大電流密度化、長尺化等の線材開発に反し、依然として線材に働く電磁力が高温超電導コイルの大型化の実現を妨げている。著者らはこれまで、超電導磁気エネルギー貯蔵装置(SMES)における巨大な電磁力の問題を解決する方法として電磁力平衡コイルの概念を適用してきた。電磁力平衡コイルは、トロイダル磁界コイルで問題となる大半径方向に生じる向心力をフープ力で平衡させたトーラス型ヘリカルコイルであり、岩盤支持を必要としないコイルである。しかし、アスペクト比(大半径/小半径)が大きな大型SMES用超電導コイルでは、大半径方向に生じる電磁力の影響よりも小半径方向に生じる電磁力の影響が大きくなる。このため、大アスペクト比の電磁力平衡コイルでは効果的な電磁力の低減を期待できなくなる。そこで、アスペクト比が大きな超電導コイルとして、発生磁場が最大となるトーラス内側での電磁力を平衡させ、コイルの部分的な無力化を実現し、これによりコイル全体に働く電磁力を低減させる発展型電磁力平衡コイルである応力平衡コイルを提案してきた。このコイルは、アスペクト比無限大で完全無力となり、応力に弱い高温超電導線によるSMES装置の実現の可能性を秘めている。また、可変ピッチヘリカル巻線とすることで、転倒力を低減できることだけでなく、垂直磁界による臨界電流密度の低下を防止することが期待できる。そこで、著者らは応力平衡コイルの効果を示すために、Bi-2223銀シース高温超電導線を用いた小型実験装置を製作した。製作したコイルは、トーラス外直径約52 cm、総巻数1224ターン、線材量約340 mである。講演では、液体窒素中での通電実験結果について発表する予定である。