高温超伝導体における交流磁場侵入とホール効果 III

電総研

馬渡 康徳


 磁場中の超伝導体の交流特性に,ホール効果がどのような影響を及ぼすかほとんど知られていない.高温超伝導体においては,実際に大きなホール電圧が観測されており,ホール効果が交流特性に及ぼす影響を把握しておくことは応用上も重要である.前々報 (98年秋季),前報 (99年春季) の研究に引き続き,磁束線の微小交流磁場に対する線形応答について理論解析を行った.前回までとは異なり,今回は,直流磁場と交流磁場とが互いに垂直である場合について考察し,ヘリコン共鳴や磁束線のらせん運動について研究を行った. 直流磁場 (磁束線) と交流磁場が平行である場合 (前回までの解析結果) では,共鳴現象が起こるためには,大きなホール効果に加えてピン力の存在が不可欠であった.しかし,交流磁場が垂直である場合はピン力が働かなくても大きなホール効果によりヘリコン共鳴が起こる.このように,共鳴現象の発生機構の違いにより,その共鳴周波数は交流磁場が平行か垂直かによって異なることがわかった.また,回転交流磁場 (円偏光電磁場) を印加した場合,その向きが右回りか左回りかによって交流磁場の侵入長や交流磁化率など大きく異なり,磁束線はらせん状に変形しながら運動することを明らかにした.