酸化物並列導体の電流分流(3)

 酸化物超電導線材を用いた大電流容量導体の構成方法として、我々は矩形断面を持った多芯線を多層に重ね並列導体とし、巻線工程の途中で転位を施すことを提案した。転位により各素線はインダクタンス的に等価になり、電流は均等に流れる。しかしながら、実際の巻線工程において転位位置が最適転位位置からずれ、各素線間の電流分布が不均一になる恐れがある。そこで、本研究では転位を施したパラレル導体において転位位置が最適転位位置からずれた場合の分流比の影響について定量的考察を行った。 試料は矩形NbTi超電導多芯線三本を用いてパラレル導体を構成し、巻線途中で転位を施した。導体に60Hzの交流電流を流し、ロゴスキーコイルから得られる信号より導体の各素線に流れる電流を調べた。 サンプルコイルは、3本パラレル導体を1層に30ターン巻いたものである。よって等分転位のサンプルコイルは、10ターン目と20ターン目の2ヶ所で転位を行ったものである。今回、疎に巻いたコイルについて、均等転位位置から転位位置をずらした場合の素線間の電流分流の様子を調べるために、転位位置を片方だけずらした場合、及び両方ともずらした場合の電流分流を測定した。また、密に巻いたコイルについても同様の実験を行った。 均等転位位置では各素線間の分流比がほぼ等しくなっているが、最適位置からのずれが大きくなるにつれ各素線に流れる電流はしだいに不均一になっていることがわかる。また、転位位置を片側ずらした場合よりも両側ともずらした場合の方が分流比の差が大きくなっている。インダクタンスをのみを考慮した回路方程式を用いて求めた分流比は実験値とほぼ一致している。密巻のコイルについても同様な計算を行ったところほぼ一致している。