BiコイルによるYBCOバルク超電導体の浮上実験

これまで我々は、YBCOバルク超電導体を電磁石上で磁気浮上させるシステムの浮上実験に関して報告を行ってきた。本システムは、コイルに流れる電流を調整することによって、バルク体に働く浮上力あるいは浮上高さを任意に変化させることが可能となる。さらに、ある条件を満たした場合は、浮上時でもバルク体に左右案内力、ピッチング方向の復元力が働くので、完全非接触の磁気力支持が可能となる。しかし、この安定性の原理(特にピッチング方向)はこれまで明らかではなかった。今回、バルク体の浮上高さを10cm程度まで増大する事を目的として大口径の浮上用電磁石を製作した。メインコイルとしては、低消費電力で運転可能なこと、コイル通電電流を短時間で変化可能である、等の理由から、高温超電導Biコイルを使用した。この電磁石上で直径4cm〜10cm(重量〜1kg)の大型のYBCOバルク体を最大約10cmまでの高さに浮上させ、さらにコイルへの通電電流を変化させことにより、浮上高さを制御することに成功した。この実験を通して得られた知見から、我々はバルク体表面に誘起される、超電導電流ループの電磁エネルギーに注目した。そして、単純なモデルを用いた電磁エネルギー計算により、上で述べた安定性の原理をはじめバルク体浮上の諸現象を統一的に説明する事が出来たので報告する。