これまでに我々は、異方性の異なる3つの酸化物超伝導体、QMG-Y123、単結晶LSCO、単結晶Bi2212について熱磁気効果(ネルンスト効果)と電気抵抗の測定から磁束の輸送エントロピーを見積り、次の特性を見出した。外部磁場Hがc軸に平行な場合、異方性の大きな違いにも関わらずLSCOとBi2212は同程度の輸送エントロピーを与える。これら2つの超伝導体に比べて、QMG-Y123の輸送エントロピーは一桁近く大きい。更に、H//cとH//abの場合の輸送エントロピーの比は、QMG-Y123とLSCOのどちらにおいても電子状態の異方性を反映しているように見える。本講演では、これまでに他のグループによって報告された実験結果も含めて、温度勾配の元での磁束運動と輸送エントロピーについて、超伝導の異方性と構造的な異方性の二つの側面から解析を試みる。