ホットプレスしたBi-2223における銀の拡散効果

現在、Bi系高温超電導体の応用は主に銀シース線材として進められており、銀シース線はマグネットなどのように磁場中で用いられることもある。そのため、銀が超電導体に与える作用を明確することは重要であり、特に磁場中での銀の効果を知ること必要であると思われる。今回、我々は銀が超電導体に与える作用について、銀の拡散とそれに伴う磁場中での超電導特性変化という観点から調べたので報告する。なお、測定試料にはホットプレスしたBi-2223を用い、銀の拡散には蒸着・アニール法を用いた。アニールの際の温度と時間は400℃‾800℃の一点で固定した拡散温度 (以下Tdとする) で48時間とした。銀の拡散はICP (Inductively coupled plasma) を用いて測定し、超電導特性の変化として磁場中の抵抗率 (ρ) の温度依存性について調べた。ICP測定の結果からLe Claire factor βを見積もった。βは体拡散に対する短絡拡散の比を意味しており、β>3のとき短絡拡散が有効となる。その結果Td<500℃の温度領域においてβ>3となり、短絡拡散が支配的であると考えられ、Td>500℃の温度領域においてはβ<3となり、体拡散が支配的になっていると考えられる。次に抵抗率 (ρ) の温度依存性では、Td<500℃の低温アニール領域でTdを昇げるにつれて、常電導領域での抵抗率は減少し、磁場中でのゼロ抵抗がより高温まで保たれていた。さらにTd>500℃の高温アニール領域ではTdを昇げるにつれ常電導領域での抵抗率は増加し、磁場中でのゼロ抵抗がより低温で破れた。以上の結果から、Td<500℃の低温アニールでは短絡拡散により結晶粒間に配置した銀が結晶粒間結合を強めることで抵抗の発生をより高温まで抑制し、またTd>500℃の高温アニールでは体拡散により結晶粒内の結晶構造を破壊してしまうために抵抗の発生を促進させていると考えられる。