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磁気光学効果を用いた高温超電導体の磁束分布の観察

1986年ベドノルツ(J.G.Bednorz)とミュラー(K.A.Muller)が高温超電導体を発見して以来、さまざまな研究が各方面で行われてきた。ところが高温超電導は従来の超電導体にはなかった多様な物理現象を含んでいるため、その実体はまだ多くの謎に包まれている。特に磁場の下では 超電導状態=抵抗ゼロ という実用上最も重要な性質が成り立たず、その詳細の解明が求められている。また従来の超電導体ではほとんど観測されなかった磁束の液体状態や、磁束とピン止めセンターとの相互作用により、磁束グラスなどの新しい概念が導入され、超電導体の相図がこれまで考えられていたものより、ずっと複雑なものであることが明らかになっている。このような高温超 電導体において私たちは混合状態の磁束観察という点に注目した。現在盛んに研究が行われているJcやTcの向上には磁束ピンニングなどの磁気的特性の評価を行うことが必要不可欠である。その端緒として、私たちは磁気光学効果を用いて、超電導材料の磁気的性質を動的に観察する実験を行った。試料としてはNEG123Nd0.33Eu0.33Gd0.33Ba2Cu3O7)を使用した。これは77K2Tで50000[A/cm2] という高いJcを持つ試料である。測定は30K、50K、77Kの三つの温度において 様々な磁場を印加し、その磁束分布を観測した。その結果、77Kでは試料への磁場の 侵入が非常に速く、そのためJcの値もほかの温度に比べてかなり低いことが確認され 、さらに磁場侵入の仕方が他の温度と異なる事が明らかになった。