これまで我々は、化学気相法によって作製した高臨界電流密度を示すYBCO膜の磁束ピンニング特性を詳細に調べてきた。その結果、磁束ピン力のスケール則に基づく解析方法が高温酸化物超伝導体でも非常に有効であることが理解できてきている。今回は、CVD-YBCO膜における磁束ピンニング力のスケール則について、温度だけでなく印加磁場の角度も含めて総合的な議論を行う。結果として、液体窒素温度において、印加磁場に対する角度スケール則が得られ、そのときのスケーリング関数は臨界電流値そのものにつまり磁束ピン力には依存しないことが分かった。さらに温度に関するスケール則との比較によって、窒素温度におけるスケーリング曲線は低温で見られるものと異なり、CVD膜においても高温と低温で磁束ピンニング機構が異なることが示唆された。