低温領域で金属系超伝導体に比べ大きな不可逆磁界(Hirr)を有する酸化物超伝導体は強磁場発生マグネットなどへの応用が期待されている。現在のところ唯一実用レベルの長尺化に成功している銀シーステープ線材は一般に機械的強度が小さく機械的ひずみにより輸送特性が容易に劣化することが知られている。したがって巻線に対して強大な電磁力が働く強磁場発生マグネットの設計にあたっては電磁応力下における超電導特性の評価やマグネット補強構造の検討などが必要となる。今回我々は Bi2212 銀シーステープ材と補強テープを共巻きにしたφ280 の R&W ダブルパンケーキコイルを用意し、液体ヘリウム中、バイアス磁束密度 10[T]でその輸送特性及び歪み特性を測定した。補強テープとしては AgCu と Hastelloy X(HX) テープの 2 種類を用意しコイルの補強についても検討を行った。AgCu, HX 補強コイルの臨界電流値(Ic)はそれぞれ 240[A], 350[A] (@4.2[K], 10[T])であった。通電電流が 388[A] に達すると AgCu 補強コイルのひずみは 0.3% を超え臨界電流値は Ic=240→120[A] と劣化した。この時のフープストレスを BJR で見積もると 217[MPa] であった。HX 補強コイルは500[A] (262[MPa]) の通電においても輸送特性の劣化は見られなかった。