前回に引き続き、(DyGd)GGの熱磁気特性について報告する。GdGGは1K以下で大きくブロードな比熱特性を示す。これはGd磁性元素の局所的な磁性相互作用によるフラストレーションであると解釈されている。Gdに磁気異方性の大きなDy磁性元素を置換することにより、エントロピー特性がどのように変化するのかを調べた。5%のDyの置換により約0.2度の比熱ピーク温度の低下が認められるものの、DyGGにおいて見られる反強磁性λ型比熱の形状は全く観測されなかった。また磁場を加えると、0.5KにおいてGdGGに比較して2倍以上の大きなエントロピー変化が得られた。これはDy元素による長距離的な相互作用が磁場のない場合にはほとんど現れないが、磁場を加えると発現し、その結果、内部磁場を大きく増加させるためと考えられる。この効果により、エントロピー密度を希釈することなしに、より低温に到達可能な磁気熱量物質を得ることが可能となる。