電流トランス型PCSの高オフ抵抗化の試み

超伝導エネルギー貯蔵(SMES)装置は電力の貯蔵効率が高いことや電力系統に対し高速で電力の入出力制御が可能であることなどから、日負荷平準化など大規模の電力用から電力系統の動揺抑制や瞬時電圧低下補償用などの比較的小規模のものまで様々な用途が考えられている。電力系統の動揺抑制や瞬時電圧低下補償用SMES装置に用いる永久電流スイッチ(PCS)に対しては、オフ動作が高速であること、オフ抵抗値が高いことなどが要求される。我々は、電力系統の動揺抑制や瞬時電圧低下補償用SMES装置でも小規模な出力1MW、容量1kWhのモジュール型SMES装置に用いる電流容量1kA、オフ抵抗値50Ωの電流トランス型PCSの開発を行っている。電流トランス型PCSは電流トランスの原理を利用したものであり、原理的にスイッチの高速オフが可能である。SMES装置とPCSを接続し運転する場合、エネルギーの入出力時にPCS両端に過大な電圧がかかり、その際発生するジュール熱がPCSの超電導状態への復帰に悪影響を及ぼす。100A-160ΩPCSでは、無誘導巻線部の冷却効率が悪い構造になっており、超電導状態へ復帰しなかった。超電導状態への復帰を考え、冷却効率を改善した1kA-8.5ΩPCSでは、PCSオフ抵抗値が0.5Ω以下と設計値8.5Ωに対して著しく小さいことが問題となった。今回はその改善策として、無誘導巻線にヒータ線を付加し、発生したヘリウムガスで無誘導巻線の常電導部分の拡大を図り、PCSのオフ抵抗値の増大を試みた。実験の結果、ヒータ加熱がPCSのオフ抵抗値の増大に効果があることが立証された。