電総研 °立石 裕,海保 勝 ,樋口 登, 石井 格,山口 浩,
新井和昭, 淵野修一郎,名取尚武, 関根聖治,野村晴彦
°H. Tateishi,K. Kaiho, N. Higuchi, I. Ishii, H. Yamaguchi,
K. Arai, S. Fuchino,N. Natori, S. Sekine, H. Nomura
Electrotechnical Laboratory, 1-1-4 Umezono, Tsukuba, Ibaraki 305-8568 ,
Japan
E-mail:tateishi@etl.go.jp
2.問題の定式化
超電導線の安定性の解析はよく知られているように、熱伝導方程式を数値的に解くことに帰着される。実験をモデル化するにあたっては、以下の仮定に基づいた。
ヒーター部は導体に対してカプトンテープとエポキシで熱絶縁されているので、ヒーター部での発熱が超電導線にどのように伝達されるかという問題があるが、この段階は無視して、超電導線に一定の熱量が入った後の変化のみを考察する。
従って、この計算で得られるMQEは実測値にくらべ小さくなると想定される。
導体断面内の温度分布はなく、一様と仮定する、一次元モデルを用いる。ヒーター部分は、熱絶縁されているため、表面からの液体ヘリウムによる冷却はないが、長手方向の熱伝導による熱はけは考慮する。それ以外の部分については、 表面からの液体ヘリウムによる冷却と長手方向の熱伝導の双方を取り入れる。
空間部分の解析には一次元線形要素を用い、時間部分については中心差分法にる。
物性値の温度依存性は、 銅の抵抗率をのぞき、計算の各時間プロセスにおいて考慮する。
具体的には、銅の熱伝導率と比熱、およびNbTiの比熱を近似式により計算する。
回転場の効果が最も顕著に現れる液体ヘリウムの定常冷却特性については、実測した、熱流束ー温度差曲線を用いて、導体の温度と冷媒温度の差に比例した熱流束がとれるものとする。なお、導体の有効冷却表面積としては、 次の二つのケースを考えた。
A:幾何学的な露出部分をすべて考慮
B:導体の射影表面に絶縁テープの露出率をかけた値
一方、液体ヘリウムの過渡冷却特性は、C.Schmidtの を用いる 回転数依なし)。
過渡沸騰冷却の持続時間(各要素について冷却量を時間積分する)を越えたら、定常冷却特性に移行するものと仮定する。
3.計算の流れ
以上の仮定を用いて、一次元熱伝導方程式を次のプロセスにより数値的に解く。
時間ステップは10-6secとし、解析対象は、10cmとった。
1.初期条件の設定 すべての節点の温度を4.2Kとする
2.ヒーター部分に一定の熱量を入れる
3.常電導転移による自己加熱、液体ヘリウムによる冷却量
を求めこれらをもとに温度上昇を計算する
4.クエンチの有無を判定する。ノーマルフロント(分流温度を越えた節点)が端部に到達した時点でクエンチ、フロントが縮小した時点で回復、と判断している。
5.2もしくは3に戻る
4.計算結果
銅比4.7 銅母材素 の12本撚 について 伝播速度 ケースB ついて計 し、実測
と比較した結果を図1に示す。静止時(0rpm)と回転時(500rpm,約25Gの遠心加 度に相当)それぞれにおいて、伝播速度、最小伝播電流とも実測値に近い値が得られた。なお、ケースAでは冷却過剰と判断される結果が得られた。
図1 伝播速度の計算結果と実測値の比較
参考文献
1. C. Schmidt, Proc. of Workshop on Stability of Superconductors in He I and HeII, P.17(1981)
2.Handbook on Materials for Superconducting Machinery,(1974)
第58回低温工学・超電導学会予稿A3-5, '98.5.22@湘 工科大学