B3-10



高温超伝導体における交流磁場侵入とホール効果
電子技術総合研究所
@馬渡 康徳



 磁場中の超伝導体の交流特性は磁束線の応答によって決まるが,ホール効果がどのような影響を及ぼすかほとんど知られていない.高温超伝導体においては,実際に大きなホール電圧が観測されており,ホール効果が交流特性に及ぼす影響を把握しておくことは応用上も重要である. 本研究では,直流磁場によって導入した磁束線の微小交流磁場に対する応答について調べ,交流磁場侵入,交流磁化率(交流損失)について考察を行った.高温超伝導体の場合のようにホール効果の影響が顕著な場合,交流磁場侵入長が異常に長くなったり,交流特性に共鳴現象が現れることを明らかにした.交流磁化率の周波数依存性において,共鳴周波数付近で交流磁化率の虚部(交流損失)のピークが高く鋭くなり,実部は激しく増減する.これらの振舞は,磁束線とピン止め中心との線形応答にホール効果が組み合わさることで磁束線が有効質量をもち,磁束運動に見かけの慣性力が働くことで説明することができる.