製法: プラズマ溶射法で、図1に示すNi円筒内面に臨界温度105Kを持つ約700μm厚の2223相皮膜を形成した。この製法はNi円筒内面をブラストした後、Ag皮膜を形成し、その上に2223相皮膜を形成させた。なお、溶射したままの皮膜は非晶質で、超伝導特性が消失する。そのため、結晶化熱処理を行い超伝導特性を回復させた。このシールド円筒を図1に示すように、内壁はFRP、外壁はステンレス製の真空断熱容器内に格納し、冷却Heガスを循環させ、〜80Kの温度に保持して用いた。また、両開口端からの漏れ磁束対策のためにパーマロイリング(100mm幅x2mm厚)を4個、超伝導シールド円筒内に入れ、また、外壁ステンレス円筒の内側を全面にパーマロイ(1mm厚)で覆った形状に構成した。
結果: 3Hz、10mGの交流磁気をヘルムホルツコイル(コイル間距離2m)によって発生させ、図1に示す超伝導磁気シールド容器内の磁気を、マグノメータ付rf-SQUID磁束計によって軸方向および径方向で測定した。図2は上部開口端からの距離を関数として、軸方向および径方向のシールド率を示した。径方向および軸方向のシールド率の最大値は約800mmの位置で得られ、径方向のシールド率が軸方向に比べて相対的に良い値を示した。点線は図1の超伝導円筒内に挿入したパーマロイリングを取り除いたとき、シールド係数の軸方向理論値を示した。また、周波数を0.5Hzにし、シールド率の変化は見られなかった。
マグノメータ付rf-SQUID磁束計による脳磁気計測を行った結果、この超伝導磁気シールド容器を用いたことによって、信号源が明確になり、より精密に計測ができる可能性を示した。
謝辞:この研究には、理化学研究所(太田浩氏)、東京電機大学(内川義則氏)、住友重機(楢崎勝弘氏)、島津製作所(高畑光博氏)の協力を頂きました。