金材技研:○神門 剛、木吉 司、井上 廉、和田 仁
神鋼 電子技術研究所:広瀬 量一、嶋田 雅生
1.はじめに
超伝導マグネットの産業応用の一つであるNMRマグネットは、近年、大型、高磁場化の傾向にある。それらのコイルは、線材使用量の低減の理由から、ソレノイドコイル部分を短くし、磁場補正用のスプリットペアー自身を大きくし、中心磁場の増加と補正の両方に寄与させることが多い。スプリットコイルはコイル相互間に働く電磁力のために通常のソレノイドにはない不安定性があることが経験的には知られているが、定量的な把握はなされていないのが現状である。今回は、スプリットコイルのギャップを変えて、クエンチ実験を行い、電磁力とクエンチの関係を調べることにより、スプリットコイル固有の不安定性の原因を考察した。
2.実験方法
製作したコイルの諸元を表1に示す。超伝導線材はNMRによく使用される低銅比のNbTi線材を用いた。コイルはアルミ合金製の巻枠を使用し、エポキシ樹脂を塗り込みながら巻線した。スプリットコイルのギャップは、巻枠間にはさむステンレスの円盤の厚みで変化させ、巻枠のフランジ部分になるべく均一に力が加わるようにした。コイルの局所最大磁場を図1に示す。電流は10%ほどしか変化しない。単体の場合と、最小ギャップである10mmの場合とで、臨界コイルのギャップを10mm〜45mmの間で変化させて実験を行った。
3.実験結果
各ギャップでのクエンチ特性を図2に示す。横軸は、コイルのギャップの逆数をとり、縦軸は各ギャップにおける、ロードライン上の臨界電流で規格化したクエンチ電流を示している。ギャップの逆数が0である点は、コイル単体で励磁した場合である。実験結果より、ギャップが小さくなるほど、低い電流でクエンチする可能性があり、ギャップが大きくなれば、比較的電流の高いところでクエンチすることがわかる。各ギャップにおける最低のクエンチ電流において、コイル間の吸引力は10000N近傍であり、不安定性の下限がコイル間吸引力とよく一致することが見いだされた。