加圧超流動ヘリウム環境におけるシリコン小型圧力センサーの特性

高エネルギー物理学研究所  �春山富義 木村誠宏 中本健志


1. はじめに
 近年、大型プロジェクトにおける超伝導マグネットの高磁場オペレーションが要求され、それにともなって加圧超流動ヘリウムを用いたマグネット冷却が行なわれてきている。LHC(LargeHadron Collider)プロジェクトにおいても高磁場、巨大な冷却空間、冷媒の電気絶縁性等の理由から超伝導マグネットは加圧超流動ヘリウムで冷却される。加圧超流動システムでは一般に、加圧超流動ヘリウム槽の圧力は、4.2Kヘリウム槽の圧力でモニターするか、キャピラリ管で1.8K→4.2K→室温まで引き出し測定を行なうのが普通である。しかし、4.2K槽と1.8K槽の間には隔壁があるため、1.8K槽の正確な圧力を知ることは特に過渡的な現象のときに難しい。また、キャピラリ管を通して内部対向流が起こり、大きな熱侵入を引き起こすことも考えられる。このため、Insituで圧力測定が可能なセンサーが必要である。本報告は、この要求を満足させるシリコン小型圧力センサー(PD116)の加圧超流動条件下における特性に関するものである。

2. 圧力センサー
 実験に用いたセンサーはPD116(豊田工機製)で、センサー径9mm、全長17mmと小型で十分にInsitu測定に対応できる。本センサーについては、液体ヘリウム温度近傍までの特性は奈良ら[1]によってすでに詳しく報告されている。今回、このセンサーを2K付近において、加圧超流動ヘリウム実験に対応する圧力をかけ、その応答を調べた。

3. クライオスタットと測定システム
 液体ヘリウム注入後、クライオスタット内を減圧ポンプで引いて飽和超流動をつくり、室温部から導圧用薄肉管でつり下げられたサンプルホルダーの中を加圧超流動状態とした。温度はほぼ2K、圧力は0.10MPa~0.17MPaとした。圧力コントロールは、ヘリウムガスの供給ラインと回収ラインのバルブを手動で調整した。

4. 測定結果
 測定結果の一例を図1に示す。 2個のセンサーについて、4.2Kと2.0Kでの圧力に対するセンサー出力をプロットしたものである。出力信号は101kPa時の値に対する変化分である。

参考文献
1. 奈良ら、Cryogenics Vol 33 (1993) pp 541-546