概要
E3-35
電力貯蔵,限流器,発電機等の交流超伝導機器においては,電流の大容量化のため超伝導素線を多数本撚り合わせた多重撚り導体が必要とされる。ところが,この多重撚り導体は直流Icに対する交流通電可能電流比が素線の本数を増すに連れ,急激に低下していくことが知られている。 撚り線導体中の素線は,導体の構造上外部マグネット,あるいは他の素線電流により導体の撚りピッチで変動する外部分布交流磁界にさらされる。分布磁界に含まれる縦成分磁界は,向きによっては縦磁界不安定性を誘発する。また,横方向成分も分布しており,横方向成分に強く依存している超伝導線の臨界電流密度も局所的な大小が存在する。この結果,交流超伝導素線内部で局所的に温度上昇し,このことが素線の安定性低下に影響していることを理論的に考察した。こうした分布磁界下での素線レベルでの安定性の低下は,撚り線導体に見られる交流電流劣化の一要因であると推測される。素線レベルで安定性に与える縦成分磁界および分布横磁界の影響を実験的に確認し,理論の妥当性を得た。