概要
C1-17
近年、ハイブリッド・マグネット、NMRスペクトロメータ、高磁界実験装置、核融合用研究機器など、超電導の高磁界・大型機器への応用が進んでいる。これらの超電導マグネットには、大口径化、高磁界化、コイルのコンパクト化、軽量化が要求され、これにはNb3Sn超電導線の高強度化が必要である。これらの要求を満たすために、高強度補強材としてNb3Sn熱処理温度(約700℃)を経ても強度の低下しないアルミナ分散強化銅を選び、高強度チューブ法Nb3Sn線を開発した。 加工方法の改良により約1kmの長尺の強化Nb3Sn線を作製し、臨界電流密度の磁場、引張応力、引張歪、横圧縮応力の各依存性、4.2Kでの応力−歪特性を試験評価、モデルコイルによる試験評価を行ってきた。その結果、アルミナ銅強化Nb3Sn線は、降伏応力(0.3%全伸び法)が240 MPa、臨界応力(印加応力ゼロでの臨界電流値を保つことのできる最大応力)が320 MPaと高い特性を示し、これらの値はいずれも従来の銅マトリックスNb3Sn線の2倍であった。さらに、臨界電流の歪依存性に着目し、スケーリング則を用いて本試料線材の歪敏感性を評価した。また、工学的に有効な各構成部材の等価ヤング率、等価降伏応力、平均熱膨張係数などのパラメータを与えて、Nb3Sn生成熱処理から4.2Kに冷却された後の各部材の残留応力を計算し、4.2Kで引張応力を印加したときの各部材および複合Nb3Sn線の応力−歪曲線を求めた。計算結果を実験値と比較した。