超伝導送電ケーブルは酸化物超伝導材料の応用として有望視されており、0.2 T 以下の平行磁界中の交流損失の低減が求められている。最近の進展が著しい YBCO 薄膜テープ線材の交流損失の評価のための基礎研究として、パルスレーザー蒸着法で単結晶基板上に作製した YBCO 薄膜の平行磁界中の磁化を精密に測定し、それに及ぼす表面バリアーの効果について調べた。膜厚が１〜２ミクロンの薄膜では、表面がスムーズな場合には、マイスナーラインのまわりに小さな幅を持つような磁化のヒステリシス曲線が観測されるが、表面が荒れているような薄膜では、ビーンモデルから予想される、M = 0 の軸に対して対称なヒステリシス曲線が観測される。表面バリアーの効果によってヒステリシスループの面積が小さくなることが示され、高温超伝導酸化物でも表面バリアーが交流損失低減に有効であることが実証された。