概要
E3-30
本研究は、超伝導マグネットの究極的な姿として期待される「永久電流マグネット」の安定性に深くかかわると考えられる超伝導接合部の電流伝播の振舞いに関する実験的研究である。 特に、永久電流閉ループの構成要素として不可欠な永久電流スイッチ用導体とコイル用導体の超伝導接合部に着目し、その接続部内の電流伝播特性について研究を行った。 超伝導接合の方法には、超伝導フィラメント同士を真空中で加熱・加圧することにより直接接続する固相接合(拡散接合)を採用した。 また、接続部の形状は、接続部内で電流が折り返すヘアピンタイプを対象とした。 接続部内の電流分布は、接続部周辺の磁場ゲインの高さに着目し、極微サイズのホール素子を用いて接続部周辺の磁場(分布)を詳細に測定し、その解析結果から間接的に求めた。 実験は、(1)接続部内でのその通電電流の増加に伴う電流伝播の振舞いの観測と、(2)永久電流モードにおける接続部の温度上昇に伴う電流分布の変化の観測について行った。 この二つの実験から、接続部内の電流分布は、その通電電流の増加に伴い幅方向に拡がりつつ軸方向にも侵入するモデルによって理解できることを明らかにした。 また、電流が変化しない永久電流のもとでも、接続部の温度上昇によって接続部内の電流分布の変化が引き起こされ、やがてクエンチに至る現象を観測することに成功した。