概要
E1-30
Bi-2212系酸化物超電導体は、低温では、高磁界中において高い臨界電流密度を持つことから 電流リード、電力ケーブル、強磁場発生用マグネットの応用に期待されている。通常、Bi-2212 Agシース線材は、テープ状のものが多く形状的に考えて、機械的強度が不均一になり、また、磁界の異方性が大きい。今回、丸線形状の多層多芯構造のAgシース線材を試作し、超電導特性を試験したので、結果を報告する。 酸化物原料は、共沈法によって作成したBi-2212系(Bi:Sr:Ca:Cu:O=2:2:0.64:1.64:X)の組成をもつ粉末をAgパイプに充填し、パウダーインチューブ法により単層、2層の素線を作成し、2層19芯の多層多芯丸線材を試作した。作成した丸線材を、大気雰囲気で部分溶融熱処理を行い、臨界電流を4端子法により測定し、金属顕微鏡とSEMによる組織観察および結晶配向性の確認、交流帯磁界率による臨界温度の測定をおこなった。 試作した丸線材(外径φ1)の酸化物コアの割合は、約60%で、熱処理温度を880℃から5℃ずつ905℃までおこなった。その結果、このサンプルの中で900〜905℃が最も良く、3.6×104A/cm2(4.2K、10T)の臨界電流密度が得られた。