概要
D1-10
層間スペーサを有する超電導コイルの巻線部では、一般に導体とスペーサの接触は銅とFRPの接触と見なすことができる。そこで、超電導コイルの不安定要因の一つである導体の動きによる摩擦発熱を定量的に評価するため、極低温において銅とFRPの接触における摩擦係数を実測した。超電導コイルに通電される電流は、数十(A)の小型コイルから数万(A)の核融合炉用大型コイルなどまで非常に幅が広く、また発生磁界も同様である。そのため、励磁時における導体とスペーサの接触応力も広範囲に及ぶ。また、摩擦係数は単一材料固有の性質ではなく、一般に相手材料の組み合わせ・接触条件・温度環境などに依存する。そこで本実験では、接触材料の組み合わせとして上記のように銅とFRP、温度環境として液体ヘリウム浸漬の一定とし、銅とFRPの接触応力を2〜260MPa程度まで変化させて摩擦係数の接触応力依存性を測定した。接触応力を変化は、FRP平板に接触する銅の形状を球面形として、球面の曲率半径を三種類(4.5mmと150mmと無限大(=平面))変化させることにより作り出した。銅の球面の曲率半径が小さいほどFRP平板との接触面積が少ないために、接触応力が増大することになる。これら、接触応力を二桁程度変化させた際の摩擦係数の測定結果を報告し、摩擦係数と接触応力の関係を検討する。