YBCO高温超伝導薄膜を用い、四端子法と磁化法を組み合わせて13桁以上の広い電界範囲に亘って電界電流密度(E-J)特性を測定した。高温超伝導体の応用は交流から直流まで多岐に亘っており、対応する電界範囲は使用条件に応じて広範囲で複雑に変化する。従って、高温超伝導体の電流電圧特性を広い電界範囲において把握することは応用上極めて重要となる。また、この様な広電界領域での測定は、高温超伝導体の混合状態における損失機構を知る上でも重要である。主な結果は以下の通りである。四端子法と、磁化測定による結果は同一曲線上にほぼ連続的につながり、両者は定量的に良い一致を示す。しかし、いわゆるGlass-Liquid相転移点近傍では四端子法で観測されるlnE-lnJ曲線が上に凸の領域―Glass状態―においても磁化法で観測される低電界域では下に凸となる領域が観測される。すなわちS字型のlnE-lnJ曲線が現れる。この事はよく知られたGlass-Liquid相転移に基づくスケーリングは限られた電界範囲でか成立しないことを意味している。電界範囲を4桁程度に限定すれば、高電界領域、低電界領域でそれぞれスケーリングが成り立つ。しかしながら、それを特徴付けるパラメータは電界範囲によって大きく異なる。すなわち、低電界領域では転移温度が低下し、動的臨界指数zの値が極めて大きくなる。