高温超伝導物質線材の最も重要な応用は超伝導マグネットである。Bi-2212やBi-2223酸化物超伝導物質の高い超伝導転移温度を生かした冷凍機冷却型のマグネットへの応用が期待されている。本論文では、Bi-2213/Ag多芯テープ線材を用いて作製した、内径(クリアボア70mm)、外径130mm、高さ130mmのダブルパンケーキ積層マグネットの特性について報告する。マグネットは冷凍機と組み合わせて運転し、10Kから40Kの種々の温度で試験を行った。30Kでの最大運転電流密度は8600A/cm2であり、このときの発生磁界は1.0Tであった。20Kにおける高速励磁試験では、2T/minの励磁速度では損失による発熱で、僅かの温度上昇が見られたが。しかしながら、10回程度の励減磁サイクルの反復後は、ほぼ一定温度となった。以上の結果は、高速励減磁の要求される磁気分離システム等への酸化物高温超伝導線材マグネットの応用の可能性を示唆するものであり、今後の実用化への大きな可能性の実証となった。