履歴効果から見積もられたAg-Bi2223テープの粒内Jc
Ag-Bi2223テープは試料内に多数の超伝導粒を含んだ多結晶体である。多結晶体の場合、超伝導電流は粒内に局在する粒内電流と粒間ジョセフソン接合により多数の粒に渡って分布する粒間電流の2種類に分けらる。一般に測定されるのは粒間電流による臨界電流特性であり、粒間電流によるJcの限界を知る上で重要な粒内Jcを評価した研究例は少ない。そこで、我々はAg-Bi2223テープの粒内Jcを評価することを目的に液体窒素温度および低磁場領域におけるJc-B特性を直流4端子法および走査型ホール素子法を用いて測定した。実験では特性が異なる全ての試料で磁場に対するJcの履歴効果が認められた。Jcの履歴効果は粒内電流が作る磁場を粒間電流が感じることで発生すると考えられており、履歴効果の振る舞いから粒内Jcを評価することができる。実験および解析の結果から超伝導テープ材料の粒内Jcは数十万A/cm<SUP>2</SUP>であることが解った。本研究から粒内Jcは粒間Jcの約10倍以上も大きい可能性があることが明らかになった。