数値計算による高温超伝導導体の交流通電損失の解析(2)

 高温超伝導線材を電力ケーブルなどに応用する場合、交流通電損失特性は重要である。これまでに、線材および集合導体に振幅が臨界電流と等しい交流電流を通電した場合の交流損失について、Norrisの理論を用いた数値計算を用いて検討を行ってきた。本研究では、電流の振幅が臨界電流以下の場合の線材内部の電流分布を正確に計算する方法を開発し、これを用いて高温超伝導テープ線材(長方形断面、および多芯線材)およびこれを用いた集合導体における交流通電損失への断面形状の影響について、詳細に考察した。 計算結果から、長方形断面をもつテープ線材の交流損失は、電流の大きな領域ではNorrisの厚さ0のテープの損失の式に一致し通電電流の4乗に比例して変化するが、電流が小さくなるにつれて理論曲線からはずれ、電流の3乗に比例することが明らかとなった。また、このずれの大きさはテープのアスペクト比が小さいほど大きくなることが明らかとなった。これらの振舞いは、これまでに報告されている実験結果をよく説明している。