現在銀シース線材の臨界電流値を定義する指標として、10<sup>-13</sup>Ωmが一般的に用いられているが、数10km以上の線材を必要とする大型マグネットを製作する場合には、臨界電流値において、発生するジュール熱は数W以上におよび、この指標で定義された臨界電流値より低い電流値でマグネットの運転を行う必要が生じる場合がある。このとき、線材のn値が高ければ、運転電流の低減とともに急激にジュール発熱が減少するため、好都合であるが、n値が低い場合は問題がある。特に、永久電流マグネットの場合はジュール発熱ばかりではなく、磁場減衰に直接影響するため、問題が極めて大きい。前回の学会で筆者らが報告したBi系永久電流モードマグネットでは、上記の指標で定義した臨界電流値より低い電流領域で、n値が2〜3まで低下するという現象が見られた。今回は、そのn値低下の原因について報告する。