会長 挨拶
低温工学・超電導学会会長
秋田 調
低温工学・超電導学会は、低温・超電導関連科学技術を発展させ、もって福祉社会の実現に寄与することを使命としています。本学会は長い歴史を有し、その起源は1961年に発足した「低温工学談話会」にまでさかのぼります。この談話会が発展して1966年に「低温工学協会」が設立され、これが現在の本学会の母体となりました。その後、低温工学協会は順調に発展し、2011年4月1日に公益社団法人 低温工学・超電導学会と改称して新たなスタートを切りました。
超伝導現象には電気抵抗がゼロになることに加え、量子効果が巨視的に発現するなど他の物理現象には見られない様々な特徴があります。特に電気抵抗ゼロで大電流を流すことのできる特徴は大きな技術的可能性を秘めており、未来を拓くキーテクノロジーの一つと期待されます。例えば、超電導体で出来た線材を巻いてコイルを作製すると電力消費無しで強い磁界を発生させることができ、このようなコイル(超電導マグネット)は既に医療診断用の撮像装置(MRI)などに使われています。また、JR東海が建設を進めているリニアー新幹線では、超電導マグネットがカギとなる技術要素の一つとなっています。ただし、今のところ超伝導現象は極低温で発現するために低温に冷やす必要があり、冷凍・冷却技術が極めて重要になります。このように超電導技術と冷却技術が組み合わさって初めて超電導の応用が実現しますが、この超電導技術と冷却技術とを一体として扱うとともに、そこに横たわる基礎科学にも目を向けてこれを技術に役立てる姿勢が本学会の最大と特長と言えます。
このような超電導科学技術の高い潜在能力を社会に生かすために、我々は以下の7つの重点領域を設定いたしました。
(1)健康長寿社会実現に貢献する先進医療・診断領域
(2)高速、快適、省エネ移動を実現する先進交通・輸送領域
(3)エネルギー問題の解決に貢献するエネルギー創出・供給・利用領域
(4)高度情報化時代を支える情報・通信領域
(5)人類の生存圏を守り広げる環境・宇宙領域
(6)人類の新たな可能性を拓く基礎物理学及び新物質・新機能開拓領域
(7)超電導機器の商用化のキーとなる冷凍・冷却機器領域
これらの領域はいずれも人々の生活や将来の科学技術に深くかかわるものとなっています。このような重点7領域での学術的・技術的発展を通じて世界の人々の健康で幸福な生活を実現するために、本学会は世界の学協会、研究者、技術者と協力して進んで行きたいと考えています。
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