Y2O3/YBa2Cu3Oy+BaSnO3擬似多層膜の磁束ピンニング特性

Flux pinning properties of Y2O3/YBa2Cu3Oy+BaSnO3 multilayered films


入江 将大, 古城 大輔, 佐藤 蒼珠, 末吉 哲郎, 藤吉 孝則 (熊本大)


Abstract: 高温超伝導体を実用化するためには、磁場中での臨界電流密度Jcの向上ならびにJcの異方性の改善が必要である。これらを達成する方法の一つとして、1次元ピンと3次元ピンを組み合わせたハイブリッド磁束ピンニングが注目されている。
 本研究では、擬似多層膜法を用い、1次元ピンとしてBaSnO3(BSO)、3次元ピンとしてY2O3を導入したYBa2Cu3Oy(YBCO)薄膜を作製することにより、磁場中でのJcの向上およびJcの異方性の改善を試みた。まず、Y2O3/YBCO擬似多層膜を作製し、Y2O3の最適な導入量とその空間的分布について調査した。その結果、Y2O3を1層当たり3パルスで66層堆積した際に、広い磁場角度で高いJcが得られた。次に、Y2O3/YBCO+BSO擬似多層膜を作製し、磁束ピンニング特性を調べた。77K、1TでのJcの磁場角度依存性において、Y2O3/YBCO+BSO試料は1次元ピンのみを導入したYBCO+BSO試料と比較して広範囲の磁場方向で高いJcを示し、BSOナノロッドとY2O3ナノ粒子がハイブリッド磁束ピンニングとして作用していることを確認した。