インフレーション探索を目的とした宇宙マイクロ波背景放射偏光観測のための超電導磁気軸受開発の概要

Development of superconducting magnetic bearing system for a CMB polarization modulator operating at below 10 K


松村 知岳, 桜井 雄基, 片山 伸彦, 菅井 肇, 下村 俊貴, 寺地 祐介, 寺尾 悠, 大崎 博之 (東大); 今田 大皓, 山本 亮, 宇都宮 真, 片㘴 宏一 (JAXA)


Abstract:標準宇宙論では未解決の観測事実を一挙に説明するため、インフレーション仮説が提唱されている。この仮説は宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Background=CMB)の偏光観測により検証が可能であり、このための地上、気球、衛星による観測準備が進んでいる。 鍵となる観測機器の一つに偏光変調器がある。これは、微弱な信号に変調をかけることで、検出器の時間的不安定性や系統誤差の低減を実現する。この観測機器への要求は、半波長板と呼ばれる光学素子を10K以下で連続回転させることであり、従来の機械式軸受では発熱源となり実現性が低い。超電導磁気軸受は非接触式であることから、摩擦が低く低温でも連続的な回転が実現できる。超電導磁気軸受は直径400mm程度のNdFeBリング型永久磁石とYBCO高温超伝導体によって構成される。回転数1Hz程度の回転速度を持ち、回転中でも回転子の温度は10K以下に保つことを要求する。本講演では、将来の衛星観測に搭載することを目的とした、超電導磁気軸受を用いた偏光変調器の開発概要及び現状を紹介する。