高磁場HTSコイルに生じる早期熱暴走(クエンチ)の抑制 (3)
〜NIレイヤー巻コイルにおける短い磁場遅れと自己保護性の両立〜

Suppression of premature thermal runaway (quench) in high-field HTS coils (3)
– Compatibility of a short field delay and self-protection characteristics for a NI layer-wound coil –


末富 佑 (千葉大); 高橋 俊二, 高尾 智明 (上智大); 柳澤 吉紀, 前田 秀明 (理研)


Abstract:No-insulation (NI)法は、高磁場を発生させるためのREBCOパンケーキ巻コイルの早期熱暴走抑制および保護技術として極めて有効である。一方、磁場精度と永久電流運転の観点からは、レイヤー巻コイルが必要であるが、NIレイヤー巻コイルでは、パンケーキ巻コイルと比較して3桁も長い励磁遅れを示すため、適応できない。これは、レイヤー巻コイルの巻線内部に大きな二次回路が形成される事が原因である(Y. Suetomi et al., SuST, 29, 2016, 105002)。本報では、層間に絶縁シートを敷いて層間接触抵抗を切り、さらに銅の薄いシートを層間に敷くことで各層のターン間をNI的につなげるようにすることで、幾何的形状はレイヤー巻コイルのまま、内部回路をNIパンケーキ巻コイルと類似な回路構造にすることができる。ここでは、以上の手法により、レイヤー巻きコイルでも励磁遅れを劇的に短くすることができることを報告する。