高磁場HTSコイルに生じる早期熱暴走(クエンチ)の抑制 (2)
〜絶縁コイルの安定運転に許容される発熱基準〜

Suppression of premature thermal runaway (quench) in high-field HTS coils (2)
– Joule heating criteria of a thermal runaway for an insulated coil –


末富 佑 (千葉大); 持田 寛希, 高尾 智明 (上智大); 朴 任中, 柳澤 吉紀, 前田 秀明 (理研)


Abstract:高磁場の絶縁REBCOコイルでは、負荷率の低い範囲であっても、電磁力に起因した応力集中(ピール、座屈、キンクなど)によって10 mmオーダーの長さの局所劣化が起き、定常的な発熱が生じる。これが大きくなると不可逆な熱暴走(クエンチ)に至る。熱暴走の抑制には、まず劣化を防ぐ技術が重要であるが、数kmから数十km級のREBCO線材を用いる実コイルにおいて、この種の劣化を完全に排除することは困難である。すなわち、絶縁コイルにおいては、局所劣化によるコイル電圧が発生していても、安定的に運転できる定常発熱基準を把握することが、実用上必須である。本報告では、高磁場コイルの熱暴走現象をもとにモデル化した数値解析により、HTS (REBCO, Bi-2223)コイルの高磁場における許容発熱指標を求めたので報告する。