Nd:YAGレーザーを用いたコンビナトリアルPLD法によって作製された YBCO薄膜の組成が超伝導特性に与える影響

Effects of nonstoichiometric compositions in YBCO films by combinatorial-PLD method using Nd:YAG pulsed laser


山田 亜佑夢, 一野 祐亮, 吉田 隆 (名大)


Abstract: RE123相において、重希土類やYの場合、REのBaサイトへの置換が起こらないとされてきた。しかし、近年これらのRE123相でもREのBaサイト置換を示唆する報告がされている。また、TFA-MOD法によって作成された化学量論比通りの組成比のYBCO膜の臨界電流密度と比較し、膜の組成比がY : Ba : Cu = 1 : 1.5 : 3であるYBCO膜の臨界電流密度が高いという報告もある。そこで本研究では、組成比が化学量比論通りでないYBCO膜において、組成比がTcやJcに与える影響を明らかにすることを目的とした。なお本研究で用いた4倍波Nd:YAG レーザー(波長:266 nm)は、主に線材作製に用いられるKrF エキシマレーザー(波長:248 nm)と違い、電力のみでレーザー発振が可能で、発振に用いるYAG 結晶は機械的に強く長寿命であるといった特徴がある。これらの特徴が、実用化へ向けた作製コストの低減に寄与すると考えられる。本研究では、4倍波Nd:YAGレーザーを用いたコンビナトリアルPLD(C-PLD)法によってYBCO薄膜を作製した。コンビナトリアルPLD法とは、一枚の基板の上に組成を連続的に変化させて成膜できる方法である。基板温度920℃、酸素圧力40Paにて成膜した結果、Ba/Y =1.35の試料でJc=1.67 MA/cm2を示し、ほぼ化学量論比通りの組成を持つ試料のJc=1.14 MA/cm2と比較しても高いJcであった。