新しいNb3Sn線材用ブロンズの研究

Studies on a novel bronze for new Nb3Sn wires


太刀川 恭治, 谷口 博康, 文珠 義之 (大阪合金); 菊池 章弘, 竹内 孝夫 (NIMS); 菱沼 良光, 三戸 利之 (NIFS); 杉本 昌弘, 高木 亮 (古河電工)


Abstract:本研究では、取扱い易いNb3Sn線材の開発を目標として、新しいCu-Sn-Zn系ブロンズの組織について研究を行った。ZnはCuに対してSnより遥かに大きい固溶限を持ち、Cu-Sn-Zn三元系ブロンズを用いると残留ZnによるNb3Sn線材の機械的特性の改善や、ZnによるNb3Sn層の生成促進等の効果が期待される。本研究では組成の異なる8種類のブロンズを溶製し、内5種類には0.3wt%のTiを添加して三元系ブロンズにおけるTiの挙動についても検討した。いずれの試料でもZnはブロンズのα相に均一に固溶しており、Zn-Ti等のZn基化合物の存在は認められなかった。鋳造後のα相にはSnの濃度勾配があるが、均質化処理により消失した。TiはCu-Sn-Ti化合物として存在し、室温における加工性をやや低下させる。本研究の結果では、ZnのSn当量は約0.5であり、ブロンズのSn当量が約15.5wt%を超えるとδ相が現れて室温における加工性が低下した。